2008年08月30日

北アルプス2008 3日目 大キレット 別れ

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北穂の直下は予想通りガレている。
拳ほどの岩と細かい砂利。
こういう場所は嫌いだ。
予想だにしなかったところで滑り、滑落する。
とにかく神経を使う。

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と、いくら文句を言っても最終的には下らなければならないのが現実。
僕らは、腹の牛丼を揺らしながら砂利道を掛け降りた。

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30分ほど降りると、大キレットの核心部に到着。
飛騨泣きと呼ばれる激しい斜面に出くわす。
去年も通っているものの、逆ルートとなると全くの別物。
鎖の長さは20メートルといったところだろうか。

「 何人ですかぁ〜っ?! 」

下にいる10人ほどのパーティが叫んでいる。

「 3人でーす!! 」

幸い譲ってくれるようなので、僕らから降下し始めた。
このような岩場でのすれ違いは、どちらが優先というルールはなく、
臨機応変な対応と譲り合いの精神が必要となる。

「 ありがとうございました! 」

降下する5分ほどの時間を彼らは譲ってくれた。
見上げると僕らが立っていた場所が15メートルほど上にある。

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「 ここは下りのほうが難しいね 」

10人ほどのパーティの1人がそう言った。

僕らは去年、大キレットを登った時、

「 下りはありえないな 」

そう思った。


そして今年。
まさにそれを体で感じていた。
飛騨泣きのトラバースルートなどは、吸い込まれそうな崖を下に見つつ、
滑りやすい岩に足をかけていかなければならない。
西穂〜奥穂を踏破した僕らは、調子に乗り、完全に大キレットをナメていた。

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高度感は勝るとも劣らず、あまりの緊張に喉が乾いている。
西側から東に面を移してトラバースし、下っては登る。
ほとんど馬の背と同じような高度感の中、そんな事が繰り返されていた。
僕らが去年歩いた大キレットの経験は、ほとんど役に立たなかったのである。

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飛騨泣きを下り、A沢のコルで一休み。
この先の長谷川ピークに備える。

僕ら3人は肉体的にも精神的にも疲れていたが、何よりも楽しかった。
いつでも死ねるこの場所で、昨日会ったばかりの若者と心の底から笑っている。
これだから旅は面白い。

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数分の休憩の後、長谷川ピークへ。
相変わらず西面から東面への移動や、わずかしかないホールドは続くが、
飛騨泣きほど難しい場所はない。
先頭もゴウ君に代わり、クライマーの心髄を見せてもらう。
下りはヘッポコな(?)ゴウ君も、登りは流石の一言。
垂直の壁をヒョイヒョイ登っていく。

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たまに調子に乗りすぎて、

「 お〜い。そっちじゃないよ〜! 」

てな事もボチボチ…

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気がつくと僕らは難所を抜け、大キレットにしては快適な岩尾根に出ていた。
最後の問題は南岳へ標高差300mの登り。
まるで要塞のようだ。
この時、時間はすでに14時。
この先、南岳から槍まで3時間はかかる。
かなり心は揺らいでいた。
昨日からの疲労を考えると、南岳に泊まるのが無難だったが、この先の日程を考えると厳しい。
オーバー気味の3時間を、今日やるか明日やるか。
どちらにしても多少無理をしなければならない状況には変わりなかった。

とりあえず南岳に上がろう。
答えはそれからだ。

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再び歯を食いしばりながらの登りが始まる。
このような壁を登るのは、もうヤケクソだった。
あ〜だこ〜だ考えても答えは一つ。
「 登る 」 しかない。
だから明らかに心臓が割れそうな急登を目の前にした時は、

「 おしゃあぁ!!やってやんよ!! 」

って。

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そして3人は大キレットの最後の壁を越え、フラフラになりながら南岳小屋に飛び込んだ。
時刻は14時半になっていた。

南岳小屋は去年ほど混んでいなかったが、相変わらずガスが立ち込めている。
早速売店で買ったCCレモンを喉に流し込み、この先の会議をする。
15時に出発したとして槍に18時。
25張しか出来ない槍のテン場は、空いてない可能性も高い。
そしてなによりも、この疲れきった体。
でも答えは一つだった。

「 槍まで行こう 」

もうこの勢いで行くしかなかった。
仮に今日、槍まで行かなければ、明日の工程が11時間オーバーになってしまう。

ここで、熱きクライマー、ゴウ君とはお別れ。
餞別のワインを渡し、再開を誓う握手を交わす。

「 また必ず穂高で会おう! 」

たかだか1日半の出会いだったのに、まるで兄弟のようだった。
語り合い、笑い、助け合い、旅を共にした。
都会ではなかなかない、素晴らしき出会い。
これも山がもたらしてくれるプレゼントなんだろう。



また会おう。穂高で。
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2008年08月28日

北アルプス2008 3日目 北穂へ

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「 おはようございます 」

早朝5時。
ゴウ君がテントに来た。
僕らは軽く寝坊気味。
相当疲れていたんだろう。
朝日はとっくに上がり、奥穂を照らしていた。

「 今日は南岳までですわ 」

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ゴウ君はここから6時間ほどの南岳までの予定。
僕らは後々の日程を考えると、槍ヶ岳まで行かないといけない。
が、ゴウ君の「 南岳まで 」という言葉を聞くと、
昨日の疲れもあるし、南岳でもいいか。
という心の揺れも出始めていた。

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今日も朝から眩しいくらいに晴れている。
予報では夕方から崩れるというが、どこをどうしたらこの天気が崩れるのか。
それぐらい北アルプスは全域で青空だった。

なにげに今日の行程も長丁場。
にも関わらず、なんだかんだで出発は7時。
ゴウ君はまだ準備をしている。南岳までの予定だから呑気なもんだ。

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一足先に縦走路を歩き始めた僕らは、20分ほどで涸沢岳に到着。
そこから見える素晴らしい景色に僕らは心を奪われた。
これから進むべき北穂、大キレット、南岳、南岳からの縦走路を経て槍ヶ岳。

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20分しか歩いていないのに、バックパックを下ろし、すっかり目の前の景色とくつろいでいた。
去年も同じ場所から同じ景色を見ているはずなのに、すっかり見入っている。
朝の空気がそうさせているのだろうか。

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後ろには昨日僕らが歩いてきた、西穂〜奥穂の稜線。
綺麗に西穂までが見える。
改めて見ると、距離自体は短い。

10分ほどすると、下から80Lのバカでかいバックパックが登ってくるのが見えた。ゴウ君だ。
ゴウ君も昨日の疲れが残っているのだろう。足取りが重い。

「 一緒に行こう 」

山で出会った人とテン場などで仲良くなることはあるが、ルートまで共に行動するという事はなかなかない。
お互いのペースも違うかもしれないし、山行スタイルそのものが違えば即アウトである。

でも僕ら3人は全くそんな心配もなく、自然にパーティを組んでいた。
まるで昔からの友人を誘うように。

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3人になった僕らは涸沢岳直下のド直角の壁を下り始めた。
朝一からド直角とはなかなかやってくれる。

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クライマーは登る一方で、下るという動作がない。

「 俺、下りダメなんす〜 」

なんて言いながらもゴウ君は楽しんでいるように見えた。

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30分も下ると今度は北穂への登り。
危険個所も多く、なかなか気が抜けない。
昨日の疲れがモロに3人を襲ってた。
今日、南岳までというプランは正解なのかもしれない。

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途中、雪渓を渡り北穂の山頂へ。
去年ココを通ったときはこれほどの雪渓はなかった。
今年は全体的に雪渓が多く残っている気がする。

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北穂は僕の好きな山の一つ。
去年単独で涸沢に来た時もここに来たくてピストンした。
この山頂は北アルプス南部の全てが見える。
そして崖の上に立ち、雲の上にいるような木のテラス。
目の前には大キレットから槍ヶ岳へ、大迫力のパノラマが広がる。
山に興味がない人でも絶対にハマらせる自信がある極上の場所。

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もちろん北穂高小屋は宿泊も可能。
しかし北穂という場所は縦走ルートの通過点であり、ほとんど泊まる人はいないという。
逆に言えば穴場。
夜、このテラスを独り占め。なんて事も可能だろう。

僕はこの大パノラマを目の前にしてカロリーメイトは食えなかった。

「 牛丼2つ!! 」

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この後には事故が耐えない大キレットが待っている。
腹いっぱいになって歩けなくなるかもしれない?
そんな事は眼中になかった。

この最高の場所で最高の牛丼を食う。
何か間違っているだろうか?

ゴウ君は縦走中は行動食オンリーのスタイルだったので、食いたそうにしつつもお菓子を頬張っていた。

ヤラしく、一口あげたらドえらい感動。

「 牛丼やばぁ〜いっス! 」

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胃袋にかきこむように牛丼をたいらげた僕らは、北穂小屋の端から大キレットを覗き込む。
ゴウ君は初 大キレット。
僕らも去年とは逆ルートなのでほとんど初めてのようなもの。
西穂〜奥穂の事しか頭になかったが、大キレットも改めて見るとヤバい。
まずこの北穂直下のスリッピーなガレ場を下るだけでも骨が折れそうだ。
牛丼食ってる場合じゃないかもしれない。



大キレットを越え、南岳までは約3時間。
北穂テラスとの別れを惜しみながら、牛丼で膨れた腹に再び気合いを入れ、小屋を後にした。

「 大キレットを越えてしまえば、この旅で危険な場所はない 」

それだけの想いで再び難所、大キレットに挑むのであった。
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2008年08月26日

北アルプス2008 2日目 奥穂へ その4

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また再び来るような想いを残しつつ、僕らはジャンダルムを後にした。
バックパックをデポした場所に戻り、ジャンダルム直下を南側に巻きながら、ロバの耳へと向かう。

岩は僕等の行く手を拒むように激しさを増す。
この疲れきった体と、集中力の切れ掛かっている精神状態にはかなり堪える。

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ジャンダルムを後にしてわずか30分くらいだろうか。
当たり前のように鎖にしがみつきながら崖を下り、最後のコルであろう場所に下りた。
目の前には先の見えない激しい登り。

体が前に進むことを拒んでいた。
行かなきゃいけないのに、一歩が踏み出せずにその場に立ちすくしてしまった。
相方もガス欠寸前で、言葉すら出ない。
おまけに飲むべき水も切れていた。
残りわずか100cc。


そんな時、ふとコルの脇を見ると雪渓がある。
僕はがむしゃらに雪渓に走り、コップで雪の表面を削り相方に渡した。

「 これを食おう 」

登るべき最後の壁を前にし、2人は天然の氷をカジっていた。
腹を壊すかもしれなかったが、おかまいなしに雪渓の雪にカブりついた。
決してウマいとは言えない。
しかし、今の2人を潤すオアシスだったことに間違いなかった。

「 行こう  行くしかない 」

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後ろを振り返ると、幻想的な雲の中にジャンダルム。
奥穂側からみるジャンダルムは、北側が大きく切れ落ちており、
とても同じものとは思えない姿で聳え立っていた。

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僕らは岩に手をかける。
最後の果てしない登りに向かって一歩を踏み出した。
相変わらず呼吸は乱れたまま。

上を見たくない。
上を見るとそこには現実があり、心が折れそうになる。
「 フウゥ〜ッ…ゼエェ〜ッ… 」

穂高の山々はピーンと空気を張りつめたように静まり返っている。
そこには2人の呼吸の音と、いまにも爆発しそうな心臓の音が頭の中で鳴り響いていた。
もう、どこが難所なのかもわからず、ただひたすら足を動かすだけだった。

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ふと顔を上げると、最終ステージである馬の背が見えた。
ここはまさに最終ステージにふさわしい、コース最大の難所。
鋭い刃物から例えられるナイフリッジと呼ばれる場所で、岩幅は1メートルにも満たず、
両サイドは500mほど切れ落ちている。

今まで何度もナイフリッジを渡ってきたが、ここは正真正銘のナイフリッジ。
東京タワーよりも高いところで、命綱なしの細い廊下を歩いていく。
そしてこのガス欠寸前の体と、切れかかっている精神。
いつでも死ねた。

手前で一呼吸を置き、立ち止まる事を恐れるかのように馬の背に手をかける。
絶妙なバランスで重なっている岩を見ていると、誰かが積み上げたとしか思えない。
周りに遮るものが何もないので、宙に浮いている岩のようにも見える。

慎重に慎重に次のホールドを探していく。
しかしあまりにも細く、立ち上がる事が出来ない。
這い蹲るように進む事しか出来なかった。
下を見る余裕はなく、ホールドを探すのに精一杯。
ここまでの長い岩登りで、すっかり慣れていた高度感が一気に崩れた。
あまりにも高く、恐怖感で思うように進めないのである。
これぞまさに最終ステージであった。

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この時、ほとんど頭は働いていなかったが、集中…集中…と頭の中で連呼。
絶対に踏み外す事は許されない。
ここまで来て負けるわけにはいかない。

そして、ようやく天空の綱渡りも終わりが近づいてきた。
奥穂の山頂が見えたのだ。

僕らは逸る気持ちを抑え、一歩一歩馬の背を進んでいた。

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そしてついに馬の背を越えたのである。
最後の岩を飛び降りると、肩の力が一気に抜けた。
この先、もう難所はない。
この時、西穂山荘を出てから初めて安堵感が沸いたのを覚えている。

あとは緩やかな道を奥穂に向かうだけであったが、相変わらず足は重く、
なかなか前に進んでくれない。
振り返ると相方は立ち止まって呼吸を整えている。

「 あと少し…あと少し… 」

僕は一足先に奥穂の山頂5メートル手前に辿り着いた。
相方はまだ遥か後ろだ。

「 最後は2人でゴールしよう 」

これだけの苦労を共にしてきた同志を置いて、1人で先にゴールすることは考えられなかった。
そう思い、その場で待つことにした。
呼吸は相変わらず整わない。
その場で岩に両手を掛け、うつむいていた。




僕は涙が止まらなかった…





何故涙が止まらないのかわからなかった。
達成感からなのか、怖い想いをしてきたからなのか。
今考えても理由はわからないが、溢れる涙を抑える事は出来なかった。
言葉に表せない真の感動があったから。
そう考えるしかないのかもしれない。



奥穂の山頂には沢山の人がいる。
当たり前だが、泣いている人なんて誰もいない。
人がいるにも関わらず、溢れる熱いモノを止めることが出来ない。

僕の場所に辿り着いた相方は笑っていた。
僕も顔をグチャグチャにして笑った。



「 さあ行こう 最後だ 」

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午後2時半。
西穂山荘を出て10時間半。
僕らは標高3190m 奥穂高岳の山頂に立った。
ペタンとその場に座り、相方と拳を合わせる。

「 お疲れ 」

相変わらず涙は止まらず、目は真っ赤に腫れていた。
ガスは未だ抜けず、たまにジャンダルムが現れるぐらいだった。
でも僕らは最高な時間の中にいた。
親父が果たせなかったルートを踏破し、10時間半という激動を駆け抜けた。
そこに奥穂があるだけで、それだけで良かった。

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そして勝利の余韻に浸りながら、僕らは奥穂を後にした。
動かない足を引きずりながら20分ほど下り、今日の宿泊地である穂高岳山荘に到着。
穂高岳山荘は、まさにお盆を思わせるような賑わいを見せていた。
再び相方と拳を合わせる。
長かった。
果てしなく長く、ここに降り立ったのがまだ夢のように感じる。
経過時間は11時間を越えていた。

早々にテン場の手続きを済ませ、コーラを2本買って相方のところに戻ると、ゴウ君がいた。

「 おお!生きてた?! 」

僕らはゴウ君からかなり後方で歩いていた為、結局天狗岳以降は会わなかったのである。
3人はこれ以上ない笑顔で笑っていた。
常に笑顔でしかなかった。

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テントを張り、ジャンダルムが夕日に染まり始めた。
ゴウ君を交え、あそこがキツかった、怖かったなど話は尽きない。
お互い、同じ修羅場をくぐり抜けてきたからだろう。
とても数時間前に出会ったとは思えないほど意気投合していた。
挙げ句の果てに人生相談まで始まってしまう始末。

これも山ならではの素晴らしい出会い。
やはり山は素晴らしい。

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僕は1人、ろうそくの火を見つめていた。
この先になにがあるのだろう?
何が僕らを待ち受けているのだろう?

でも今は考えるのをよそう。
今日は、今日だけは。
星空を見上げる力も使い果たし、僕はテントに潜り込んだ。


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本日の移動距離 4.5km
就寝21時
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2008年08月24日

北アルプス2008 2日目 奥穂へ その3

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ジャンダルム。標高3163m。
フランス語で憲兵を意味する。
まさに奥穂を守るように立っている護衛。
それは西穂〜奥穂の縦走路に立ち、圧倒的な存在感で全てのアルピニストを魅了する。

僕らの旅の目的の一つはここだった。
ちょうど1年前。奥穂から見たジャンダルム。

「 あの上に立ちたい 」

奥穂の頂上に立てば、誰もがそう思うだろう。
その為には、この長く険しい道を歩いてこなければ立つ事は出来ない。
僕らは、ただそれだけの想いでここまで来た。



第3ステージをクリアし、天狗岳で軽い昼食をとると、先には当然のように激しい下りが待っていた。
天狗のコルへの下り。
明らかに疲れが出始めていた。
登りだけならまだしも、ほとんど垂直の岩下りが続き、気を許せば谷底。
まだ余裕はあったものの、この辺りから肉体的、精神的に疲れが出始めていたことを憶えている。

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そんな矢先のこと。
天狗のコルへあと少しといった所だろうか、長い鎖場が一箇所。

「 早くコルに下りたい 」

そんな焦りもあったんだろう。
3点支持は守っていたが、その場所の足場は引っ掛けるポイントが少なかった。
多少右足が不安定であることはわかっていたが、先を急ぐあまりそのまま左足を移動。
その瞬間右足が抜けてしまったのである!

一瞬にして頭に血が逆流したようだった。
両足が抜けてしまったボクは、足が宙に浮き、両腕で鎖にブラ下がっている状態。
さらに足が抜けた時に肘を強打したらしく、流血しているのがわかった。

良く見えない足場。パンパンに張っている二の腕。肘の痛み。
これは冷静にならないとマズイ。

足場を確保しないことにはこの状態を回避出来ないので、
鎖にブラ下がったまま、体を振り、爪先をアンテナにして引っかかる場所を探した。
すると、足の長さがギリギリ届く最下部に爪先をかけることが出来たので、ひとまず修羅場を脱出。
それから先は慎重に足を伸ばし、コルへと下ったのである。
九死に一生を得たというと大げさだが、一瞬の油断と集中力の低下が招いた、事故の一歩手前であった。

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天狗のコルに下りると、追い討ちをかけるように激しい登りが待っている。
畳岩尾根の頭への登り。

「 なんてことなく登りきれるだろう 」

そう思っていた。
しかし何かがおかしい。
3歩進んでは止まり、息を整えるが、いくら休んでも呼吸が整わない。
10分間休んでも「 ゼェー…!フゥー…! 」という状態。

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僕らは完全に酸欠だった。
未だかつて味わったことのない、ヒドい酸欠に陥っておいた。

現在、標高は2900mほど。
ここまで3000m前後の稜線を歩いてきたので、体が慣れていないというのは考えにくかったが、
酸欠であることは明らかであり、いくら休んでも呼吸は乱れたまま。
乱れたまま登らざるを得ない状況が繰り返される。

西穂山荘を出てから6時間が経過し、7時間も過ぎようとしていた。
しかし、この畳岩尾根の頭への登りは終わりが見えてこない。
相変わらず呼吸は乱れている。
もう気が狂いそうだった。
この頃からガスも出始め、展望すら奪われていく。
ただただ動かない足を動かすしかなかった。
こうなってくると、モチベーションも低下し始め、ちょっと疲れただけで心が折れ、すぐ立ち止ってしまう。
距離を稼げなければ、心身も病んでいく。
まさに悪循環だった。

でも歩くしかなかった。
最終的には自分の力で歩き、乗り越えるしか道はないのである。
そう言い聞かせながら、動かない足にムチを打ち、奥歯が磨り減るほどに歯を食いしばっていた。

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すると、8時間に達しようかという時、急に目の前が開けた。
目の前には四角く整った巨大な岩。
そのてっぺんに4、5人が立って叫んでいる。

「 ジャンだ… 」

先を歩く相方がそれに気づくと、僕等は叫んだ。

「 おおおおぉぉぉ!!!ジャンだ!!! 」

ジャンダルムは突然、僕等の目の前に姿を現したのである。
まるで微笑んでくれているかのようにも見えた。
それぐらい今の僕等に、喜びを与えてくれる存在だったからである。

後々になって考えてみると、畳岩尾根も、その後にあるコブ尾根の頭もいつ通過したかわからなかった。
よっぽど必死だったんだろう。

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急に足は軽くなっていた。
疲れはあったが、なによりも憧れの頂が目の前にある。
2人が笑顔になる理由はそれだけで充分だった。

ジャンダルムはピークの向こう側が500m近くスッパリ切れ落ちている為、そのまま進む事が出来ない。
その為、ピークに立った後、またここに戻ってくる必要がある。
バックパックをこの場に置き、ほぼ垂直であるジャンダルムの岩を登り始めた。

ルートらしきルートはない。
ジャンダルムがここまで登ってこいと言っている様にも見える。
僕らはただピークに立ちたいという想いだけで、道なき道をガムしゃらに登る。
あと5メートル…3メートル…1メートル…


そして遂に僕らは、1年前に志した頂に立った。
喜ぶ気力すら失いかけ、未だ安定しない呼吸を整えていた。
残念ながらブ厚いガスに覆われ、見えるべき奥穂は気まぐれにしか顔を出してくれない。

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それでも2人の心にはジャンダルムがしかと刻まれていた。
静かだった。
10mほどの狭いピークに座り、何を語ることもなく僕らは余韻に浸っている。

そして同時にジャンダルムの上からは、第5ステージであるロバの耳が見える。
ギャグかと思うほどの複雑なルート。
進むべき道が見えない。
挙句の果てに、目を疑うような場所に人が這い蹲っていたりする。

残りは距離にすると1kmもないんじゃないだろうか?
しかしルートからすると、1時間半〜2時間見なければ行けそうにはない。
今の僕らに、2時間という時間は気の遠くなるような時間に感じる。
奥穂の頂上に立つイメージすら沸かない。


「 行くしかない!やるしかないんだ! 」


そう激を飛ばしながら、僕らはジャンダルムを後にした。
posted by syoddy at 21:54| 宮城 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 北アルプスを終えて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月21日

気違い達

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すっかり旅人な僕等は、山から降りてきたばかりだというのに、
今夜からまた旅に出てきます。
ホント!懲りない人達っ!

つーわけで北ア物語はちょいとお休み。
ど〜なる次号!奥穂が見せる感動のクライマックス!


ぢゃ、行ってきまぁ〜す♪
posted by syoddy at 20:04| 宮城 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 山岳 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月20日

北アルプス2008 2日目 奥穂へ その2

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穂高の山々に映える爽やかな笑顔の彼は、この縦走路で出会った吉田ゴウ君。
兵庫から来たという、世界の壁を登り歩いてきた26歳のクライマー。
彼はこの縦走路はおろか、大キレットすら経験していないという。
そんな少しアバウトな感じが肌に合ったのか意気投合し、
このあと南岳まで旅を共にすることとなる。


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西穂山頂を後にした僕らは、深く息を吸い込み、縦走路の核心部へと足を踏み入れた。

「 もう戻ることは出来ない 」

そんな風に思いながらも、心は希望に満ち溢れていた。

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事前に調べていたとおり、西穂から先は急変。
岩場は鋭く切れ落ち、ルートも自分で考えながら進んでいかなければならない。
特に下りは最新の注意を払わなければならず、岩登りの基本である3点支持を怠ると谷底へ真っ逆さま。

3点支持とは、両手両足のうちいずれか3つを岩か鎖にかけて、
安全を確保しながら移動するという基本中の基本。
すなわち動くときは両手両足のどれか1つを動かし、ホールドしたらまた1つ動かす。
逆に言うと、3点支持さえ守っていれば、どんな恐ろしい岩場でも渡りきる事が可能である。

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ご覧のとおり、西穂から先は自分でもどこを歩いているのかわからないほど険しい。
振り返るたびに首を傾げてしまう。

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西穂山頂から標高を100mくらい下っただろうか。
行く手に次なる目的地、間ノ岳が見えてきた。

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間ノ岳直下の岩は赤く染まり、遠くから見ただけでも足場が不安定な場所であることがわかった。
標高差はたいしてないものの、いつ落石が起きてもおかしくない。
そう思いながら、直下手前の稜線に差し掛かった時だった。

「 ラーーーック!!!! 」

落石を告げる先行登山者の声が、深い谷に響き渡る。
誰かが踏み外した人の頭くらいの岩が斜面を走り、
その一つがきっかけとなって、いくつもの岩がまるで雪崩のように転がり始めた。

「 カッカーン!ゴゴゴゴ!バチバチバチ… 」

僕らはその場で呆然と立ちすくしてしまった。
まるで天ぷらでも揚げているかのような、凄まじい音が響き渡ったと思えば、
あっという間に岩は谷底へ消え、辺りはシーンと静まりかえっていた。

幸い斜面から離れた場所にいたので、何事もなかったが、
もし直下にいたら生きていただろうか?
自分の頭上から、頭ほどの岩が予想出来ないスピードと軌道で飛んでくる。

こんな事があった直後は、ふと我に返る事が多々ある。

「 ああ、なんでオレはこんな場所にいるんだろう…? 」

って。

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慎重にガレ場を登り、間ノ岳のピークへ。
間ノ岳は頂上を示すモノが何もなく、一つの岩にペンキでピークの証があるだけ。
それでも展望は素晴らしく、また一つ難所を越えたという満足感に浸っていた。
第2ステージクリアである。

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お分かりだろうか?
左手に槍ヶ岳が現れ始めた。
カメのようなスピードで動いていた僕らにはわからなかった。
少しずつだが前に進んでいるということ。

遠くに映る槍の雄姿は、不安だらけの僕らに勇気を与えてくれていた。
しかし、あの場所はこの長い旅の中間地点である事も現実であった。

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間ノ岳の山頂で初めて休憩らしい休憩をした後、
間天のコルへ、再び激しい下り。
激しく登っては下り、下っては登る…
これが最強縦走路たる所以。

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振り返ると間ノ岳の雄姿。
コイツもなにげに鋭く天を仰いでいる。

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間ノ岳を下り、間天のコルに着くと、第3ステージの目玉、
天狗の逆層スラブが現れる。
ココは次のピーク、天狗岳への道中にある難所。

通常、上を見あげた場合、岩は奥側にある。
だから指を引っ掛ける場所が必ずあり、容易に上り下りすることが出来るのだが、
これが全くの逆パターンになっているのが、この逆層スラブ。

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上を見上げると、岩は奥側ではなく、手前にはみ出しているので、
引っ掛けようがない。
おまけに下りともなると、下が見えず足を引っ掛けられないので、
少し宙に浮きながら懸垂下降で降りなければならない。

それに比べれば登りはまだ楽で、鎖を使い腕力と靴のフリクションを効かせれば、
気合で乗り切ることが出来る。
技術的にはさほど難しくないが、パワーを必要とする場所。
声を張り上げながら、一歩ずつ踏み上げていく。

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午前9:00
間ノ岳の1.5倍はあろうかという急登を登りきり、
ようやく縦走路中間付近に当たる天狗岳に到着。
西穂山荘を出てから5時間が経っていた。

どれくらい時間が経ったのか、あと何時間かかるのか。
そんなことは気にならなくなっていた。
目の前に広がる広大な景色と、僕らが立っている非現実的な岩場。
すっかり気持ちはハイだった。


しかし、本当の修羅場がここから始まるということ。
天狗岳山頂の僕らには、知る由もなかった。
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2008年08月18日

北アルプス2008 2日目 奥穂へ

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午前2時20分。
緊張のせいか、ふと目が覚める。
アラームセットは2時30分だ。

昨晩の雷は何事もなかったかのように静まり、穂高は僕らの出発を歓迎してくれていた。

今日はこの旅のメインディッシュ。
一般登山道としては、日本で最も難しいとされる「 西穂高岳〜奥穂高岳 」のルート。
前回も書いたが、行動時間が長く、水場もない。
天候悪化時のエスケープルートもなく、的確なルートファインディングを求められる細い岩の稜線が続き、
嫌になるほどのアップダウンが繰り返される。
気力、体力、運、経験、技術。
全てが揃わないと抜けられない。日本を代表するハイレベルな縦走路の一つである。

早々にテントを撤収し、朝飯を平らげる。
この時点で、緊張はさほどなかった。
むしろ、どんな場所が待ち構えているのだろう。という期待感のほうが強い。

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午前4時。
入念にストレッチを行い、ついに旅立ちの時。
2人は無事を祈る握手を交わす。

「 行こう 」

まず最初に目指すのは標高2909m 西穂高岳。

西穂の山頂までは、独標(どっぴょう)とピラミッドピークという2つのピークを越えていく。
(独標とは名もなきピークのこと)

新穂高からロープウェーで来た人達のほとんどは、独標まで。
独標から先は急に岩場の稜線と化す為、一般の人はなかなか足を伸ばせない。
しかし、独標からでも十分に穂高の山々を感じ、朝日を拝める為、
西穂山荘に泊まっていた人達も僕らと同じように、4時に登り始める。

漆黒の闇に包まれている西穂の稜線に、ヘッドランプの明かりがまるで竜のように連なる。

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僕らもヘッドランプを頭に装着し、西穂の稜線を歩き始めた。
独標まではハイマツに覆われた緩い登山道。
朝一の起きていない体には調度良い。
かつ、朝の空気がが体に染み渡る。
大きく息を吸い、一歩ずつ歩きながら穂高を全身で感じていた。

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わずか40分ほどで標高2701m 西穂独標に到着。
朝日はまだ稜線に隠れていた。

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独標に立つと、これから進むべきピラミッドピーク、西穂高岳、間ノ岳への稜線があらわとなる。
少しずつ高まる緊張感。
先へ進む人達を見ていると、明らかに岩の道が続いている。

「 ああ、やっと穂高に来た 」

ここまでの道は樹林帯やハイマツに覆われていて、どこか東北の山々と変わらなかった。

しかしようやくここに来て、ゴロゴロとした岩がむき出しになり始める。
これぞまさに、僕らが知る北アルプスの道だった。

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しかし独標から先は、思ったより鋭いわけでもなく、
比較的楽しみながら岩場を歩くことが出来る。
とはいえ、一瞬の油断が事故に繋がる場所であるという事に変わりはない。

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独標から歩くこと30分。
第二の独標 ピラミッドピークに辿り着く。
ここで、前穂の稜線から幻想的な朝の光が入り始める。

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西穂の山頂まではここからさらに1時間。
ピラミッドピークから稜線はさらに細くなり、行く手を遮る。

そして遠くに見える西穂高岳を見ると、明らかに不安感が募る。
なぜなら、西穂高岳から先が本当の難所の始まりであるにもかかわらず、
ここまでの1時間半で、多少なりとも体力を奪われている。
そしてここからひたすら続く西穂への登り。
仮に西穂の山頂に着いたとして、ゴールの奥穂まではさらに7〜8時間かかることになる。
イメージが沸かない…気が遠くなりそうだった。

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こんな荒れ果てた岩場にも、優しい笑顔のような高山植物がところどころに見られ、
僕らの気持ちを癒してくれていた。
切れ落ちた岩場ではとにかく神経を使う。
張り詰めた気持ちで登っていると、心も乱れ、集中力を欠き、事故に繋がる。
そんな時、ふと岩の陰から現れる花。
気づかずとも皆、山の上に咲く花に助けられているのかもしれない。

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西穂山荘を出て2時間半。
標高2909m 西穂高岳に辿り着く。
第1ステージクリア。といったところだろうか。
この時には気がつかなかったが、この西穂高岳を踏んだことで、
僕らは去年から歩いた穂高の山を制していた。
北穂、奥穂、前穂、西穂。

前に進むことしか頭になかった。そんなことに気づく余裕すらなかったのだろう。


さあ行こう。まだ道は長く険しい。
本当の物語はここからである。
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2008年08月16日

北アルプス2008 1日目 西穂へ

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2007年8月。
僕らは奥穂高岳の山頂にいた。
標高3190m。
日本で三番目に高い山の頂に立っていた。

そこから見たもの。
「来年はあの上に立とう」

そう誓い、上高地に下山したのだった。
2008年の旅はそこから始まっていたのである。

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2008年8月8日 午後9時半。

「 お疲れ 」

仙台駅で相方と待ち合わせる。
仙台の街は七夕祭りの最終日で、ごった返していた。
浴衣を着た女性をはじめ、うちわを持った家族連れ。

僕らは明らかに浮いていた。
パンパンに膨れ上がったバックパックを背負い、片手には土にまみれた登山靴。
一歩間違えれば浮浪者にも見えかねない。

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でもそんな外れている自分達が、なぜか誇らしく思えた。
それは、一つの大きな事を成し遂げなければならないという、熱い志があったからに他ならない。
ちょうど1年前に芽生えた想い。
この時の2人は、常にその事だけが頭の中にあったように思う。

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仙台から夜行バスで松本へ。
朝7時に松本からローカル線で上高地へ。
そしてここで狙ったかのように、お決まりのトラブル発生。

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電車を降りる為の切符がない…
どこをど〜探してもない。
電車を降りれなければ、すぐリンクしているバスに乗り継げない。

「 こりゃ〜困った…! 」

5分ほど探すが、相方に迷惑をかけたくない想いもあり、
渋々再支払い…
情けをかけて、500円値引いてもらうが、
1900円の損失…
嗚呼、この先大丈夫なのか…?
不安に不安が重なる。

まあトラブルは旅の付き物。
前向きに前向きに。

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そして1年前となんら変わらぬ姿で、上高地は僕らを迎えてくれた。
梓川は、これ以上ない美しさで穂高を映し出している。
朝9時だというのにすでに河童橋はごった返していた。
しかしそのほとんどが観光客で、僕らのように重装備の者はいない。

「 穂高に行くの?頑張ってね 」

なんて言われるぐらいだ。
辛い想いをしてまで登ろうとは思わないんだろう。
まあ確かに、上高地で十分に穂高を感じることが出来る。
顔が映りこんでしまうぐらいの美しい梓川と、広大な穂高連峰が目の前にあれば、
僕らでも少し満足してしまうぐらいだから。

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本当はもう少し上高地に留まっていたかった。
この独特の雰囲気がある上高地は、何時間いても飽きることはない。
しかも今回の縦走のゴールは全く別の場所であり、この場所に戻ってくることはないという事も、
名残惜しくさせる理由の一つであった。

しかしそうも言ってられないので、一通り上高地を探索した後、
今回の縦走の入り口へ向かう。

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「 上高地 西穂高岳 登山口 」

ここが、これから始まる長く険しい道のりのスタート地点である。
一体この先に何があるのだろう?
不安と期待が交差する中、僕らは最初の一歩を踏み始めた。

上高地から西穂高へのルートは、迂回しながらゆっくり登るルートとは違い、
斜面をまっすぐに登る、いわゆる直登ルート。
当然斜度はキツく、さっそく汗を搾られる。
去年ほど事前トレーニングをしていたわけではないので、かなり堪える。

さらに雲行きが怪しい。
1時間も歩いた頃から、地震と間違えるほどの雷が頭上で鳴り響く。
まるで空が割れるような乾いた音が、穂高に響き渡る。

「 これはマズイな… 」

ふと、先日の岩手山の夕立が頭をよぎる。
案の定、青空は消え、バケツをひっくり返したような雨が降り注ぎ、
僕らの行く手を遮るのであった。

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そんな状態で登ること3時間半。
西穂高岳の麓、西穂山荘に辿り着く。
今日の宿泊地はここだ。
残念ながら上高地からカメラを出せることもなく、ただひたすら足を動かすしかなかった。
歯を食いしばりながらただひたすら。

雨が降るというだけで、山登りは激変する。
ただただ下を向きながら。景色が見えることもなく足を動かしていく。
時間の流れは変わり、自分がどれだけ歩いているのかさえわからなくなる。

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そんな僕らの苦労とは裏腹に、西穂山荘は賑わっていた。
ここは新穂高温泉からロープウェーでアクセス出来ることもあり、
穂高連邦の入門コースとも言える場所。

しかし同時に、穂高連峰 最難関コースの入口でもある為、
初心者で賑わう中に、ハードコアな匂いをプンプンさせる人が混じっている。
それがまたなんとも違和感があり面白い。
僕らもそんなオーラを出せているのだろうか。

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着くなり、西穂山荘名物のラーメンを注文。
これがまた渇いた喉に染み渡る。
やはり山荘のラーメンはいつ食べても旨い。

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テン場も既に満タン。
ここに張っている半分以上の人は、明日僕らと同じルートへ挑むのではないだろうか?
じゃなきゃこんな雷雨の中、好き好んでテントなんて張らないだろう。

僕らも早々にテントを張り、明日のルートの最終チェックを行う。

「 明日、本当に越えられるのだろうか… 」

未だ実感が沸かなかった。
予定では10時間オーバー。
水場もなければ天候悪化時のエスケープもない。
道は整備もされていないような細い岩尾根。

でもやるしかない。
ここまで来て引き返す気はさらさらない。

明日のゴール、奥穂高の山頂で相方と笑顔で握手を交わす。
その画以外はイメージしたくなかった。


北ア ガイド地図.jpg
本日の移動距離 5.6km
就寝 20時
posted by syoddy at 21:35| 宮城 ☔| Comment(2) | TrackBack(0) | 北アルプスを終えて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月14日

帰還

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皆さんご無沙汰してました。
走り続けた、5日間の旅から帰ってきました。
なんども死にそうになりながらも、生きて帰って来れた。
それだけで胸がいっぱいです。

いろいろありすぎて、何から伝えていいのかわかりません。

心の底からの感動、素晴らしき出会い、自分との戦い、数々のドラマ。
うまく伝えることは出来ないと思うけど、頑張って書いてみたいと思います。


でも、今日は少し休ませてください。
今は、流れる時間に身を委ねる事しか出来ないんで。
posted by syoddy at 22:31| 宮城 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 北アルプスを終えて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月08日

デッパツ

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いやいや、やっぱ今年もテンパりました…
なんでこんなに準備に時間がかかるんだろう?

まあ良く考えてみりゃそ〜だよね。
約5日間の生活道具を。このバックパック一つにまとめなきゃいけないんだから。
これが10日とかになったらど〜なるんだろ…?!

重量は水、食料含めて約17キロ。
思ったよか重くならなかった。
テントと寝袋と食料が増えてるのに。
去年はホント、無駄なものを担いでたんだな〜。

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最後の悪あがき。
衣類用のスタッフバッグを、軽量なコーデュラナイロンのものに変更。
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-12g。

計-514g。
帰ってきたらもうチョイ頑張ろ…


それにしても、なんだかドキドキが止まりません。
想像するだけでアドレナリンが出る一方、ビビリもかなりあります。
問題は2日目の西穂〜奥穂間。
日本屈指の超エキスパートルート。
今日、仙台の石井スポーツでまさにそのルートのDVDが流れていて30分くらい見入ってた。
「ありえね〜…」
ど〜見てもド直角とかの岩を下ったり登ったり…
若い女の子が笑顔で登ってたけど…


まあグダグダ考えるより、いっちゃえ〜♪的なノリで楽しんできます。
ぢゃ!
またデッカくなって戻ってきます!
皆さんもお盆休み楽しんで下さいね〜!
posted by syoddy at 19:42| 宮城 | Comment(0) | TrackBack(0) | 北アルプスに向けて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月06日

軽量化大作戦その3

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今回は…
地図をコピーして縮小。
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A4サイズにして-83g。

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ガスストーブの入れ物のタグをちょいと切って、
IMG_0056.jpg
-1g。

前回との合計 -502g。

やっとペットボトル1本分。
とりあえず当初の目標は達成したけど、もうちょい頑張りたいトコ。
やべぇ〜…時間ないっす〜…
posted by syoddy at 22:59| 宮城 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 軽量化大作戦 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月05日

カウントダウン

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去年同様、松本行 信州ライナーのチケットを取ってきました。
最難関ルートの日程も決まり、いよいよです。
今週末、金曜日に旅立ちます。

な〜んとなくイメージがあるから、去年ほどの不安はないんだけど、
やっぱり予想外のものがドッカドカ出てくるんだと思います。
おおおぉ〜!なんだこれ〜?ドコ登ってくのおおおぉぉ?!
みたいなところがバンバン出てくるんだろうな。


ホント、死んでもおかしくない場所。
でもそこをクリアした時、日常生活では絶対に味わえない達成感と、
心の底からの感動があるから、皆行くのだと思います。

そこに立った者にしかわからないものがある。
山ってそんな場所なんです。
posted by syoddy at 22:17| 宮城 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 北アルプスに向けて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月04日

繋がり

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右側NIXONクロックの下に、仙台のタイドグラフ入れました。
今日、明日、明後日のタイドがわかるようになってます。
これで仙台ローカルはバッチリ!ファンウェ〜ブGETっすね!

んで先週は朝一にガッタガタの波に乗って、
昼過ぎから、すみかわローカルチームのキャンプに参加。
キャンプってそのまんまのキャンプね。
テント張って、肉食って暴れまくるという…
まさに夏!って感じのイベントで、飲めないくせに飲んだくれてハッちゃけました〜。
ウルさすぎて周りからクレームだらけで怒られたけど…
しっかしなんだろね?この夏ってヤツの開放感は。
冬ももちろん好きだけど、夏ってやつもここ数年で同じくらい好きになりました。
昔は大っキライだったのにな〜…


あと不思議なのが、いろんな人との出会い。
この横乗りの世界っつーのは、横の繋がりで色々な人と出会う。
スノーボーダーは特にその傾向が強いんじゃないかな?
一人で楽しんでいたものが、二人になり三人に…
ドンドン楽しさが増していく。
実際、昨日同じ時間を過ごした人達も、よくよく考えてみると、
なぜこの場に一緒にいるのか不思議だ。
あれ?どっからどう繋がったんだろう?って考えてしまう。


ボクは仙台に来て本当に素晴らしい仲間と出会った。
彼等一人一人がいなければ、今のボクはここまで楽しんでいたとは思えない。

スノーボードという文化がもたらしてくれたモノ。
それは自分が思っている以上に大きいものなんだと思う。
posted by syoddy at 23:29| 宮城 ☁| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月01日

軽量化大作戦その2

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財布をカードとお金だけに。
入れ物はダイソーで購入。
IMG_0002.jpg
-135g。

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熊は多分いないので(?)
-129g。
つーかこの熊鈴、南部鉄器で出来てて、無駄に重いんです…

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バックパックの無駄なベルトやアタッチメントを切断。
-47g。

IMG_0007.jpg
枕も衣類を丸めて代用すりゃいらない。
-103g。

合計 414g。
前回からの合計で418g。
ようやくエアマット一個分くらいの軽量化かな〜。
この調子で1kgぐらいまでいきたいッス。

いやぁ〜やべぇ〜…あと1週間しかない…
posted by syoddy at 20:27| 宮城 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 軽量化大作戦 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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